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未だに多くの謎に包まれている うなぎの一生コラム

vol.16

2010年6月11日

 暑い季節になってくると、ニュースでも良く取り上げられるのが「土用の丑」。そして映像には必ずといっていいほどうなぎ屋の光景が映っています。今は夏に限らず、いつでもスーパーにうなぎの蒲焼きが並んでいますが、うなぎがどこで獲れるのかなど、実は案外と知らないのではないでしょうか。それに、土用の丑には、なぜうなぎなんでしょうか。

 そもそもうなぎには、日本うなぎ、ヨーロッパうなぎ、アメリカうなぎといった16種類が知られており、日本うなぎは、本州から東アジアに生息しています。あなごや鱧(はも)も、同じうなぎ科に属しています。うなぎは体長40〜50pの、全身をぬるぬるとした粘液に覆われた魚です。ウロコはなさそうに思いますが、退化して皮膚の下に埋まっています。そして空気中でも皮膚呼吸で生きることができ、粘膜のお陰で、水のないところでもかなり長時間生きていることができるのです。東南アジアなどでは、うなぎが雨の中、池から池へと道を横断する光景をみることができるそうです。また、株の相場や気温の急上昇を表す「うなぎ登り」という言葉があります。これは、うなぎが湿ったところであれば、崖や滝などの切り立った場所さえも岩と岩の間を上手に伝って登っていけることに由来しています。普通の魚は川を遡ることもあまりしませんし、よく川を遡る鮭も、段差はせいぜいジャンプして届く高さを登る程度に留まるだけに、うなぎの能力は突出しているといえます。ちなみに、日光の中禅寺湖に住むうなぎは、華厳の滝を遡って入ったのではといわれています。

 これほどよく目に、口にするうなぎなのですが、その生態には未だに非常に謎が多いのです。静岡県の浜名湖はうなぎの名産地として有名で、浜名湖と周辺には養殖用のビニールハウスや池がたくさんあります。ところが、そのうなぎは浜名湖生まれではないのです。普通に養殖と言うと、親魚から採卵して稚魚を孵化させ、それを育てていくものです。ところが、うなぎは採卵して孵化させることが実験室レベルでは成功していますが、非常にコストがかさむので、実用レベルでは成功していないそうです。養殖のうなぎは、11月〜4月頃に黒潮に乗って海岸にやってくるシラスウナギと呼ばれるうなぎの稚魚を獲って養殖池で養育したものなのです。それでは、シラスウナギがどこから来ているのか?これは長い間、謎とされていました。ところが2005年に、ようやく日本の遥か南方のマリアナ諸島周辺の海域であることが確認されました。そして孵化後、徐々に大きくなりながら北赤道海流に流され、台湾沖辺りで黒潮に乗り換え、冬に日本の海岸に辿り着くのです。その頃のシラスウナギは、5〜6pの細い透明な紐のように見えます。それを養殖池に入れて育てていくのです。天然のうなぎであれば、大きくなりながら川を遡り、親になると今度は川を下って、遥か2000km以上南の産卵場所まで移動していくのですが、親うなぎがどのルートを辿っているのかはまだ謎に包まれています。養殖池に放されたうなぎは非常にデリケートです。水質の良し悪しが、大きくその成長や病気の発生などを左右するので、養殖業の人たちは日夜、水質管理を怠ることができません。こうして養殖されたうなぎが出荷・加工されてスーパーやうなぎ屋の店頭に並び、消費されているわけです。現在、市場の半分以上は、中国、台湾、マレーシアから輸入したうなぎによって占められており、残りが国産の養殖うなぎ。天然のうなぎは市場の0.3%以下しかありません。

 なぜ、うなぎはスタミナがあるとか、「土用の丑」の日にうなぎを食べるとよいとか、言われるようになったのでしょうか。そもそも土用というのは古代中国で考え出された陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)に基づいた暦の表記で、土用とは各季節の終わりに設けられた18もしくは19日間のことです。江戸時代、夏の土用の頃、売り上げ不振に悩んだ江戸のうなぎ屋から相談を受けた平賀源内が、丑の日に「う」の付くものを食べると身体にいいという昔からの言い伝えに引っ掛け「今日は土用の丑の日」と書かれた紙をうなぎ屋の店頭に張り出し、それに引かれた客が多く集まったのが始まりです。これが日本における宣伝の始まりといわれています。またこれは単なる宣伝効果だけでなく、体力を消耗する暑い時期に必要な栄養成分が、うなぎには多く含まれているという実証も兼ねています。うなぎには、肌や目、粘膜を健康に保ち、スタミナ不足を補ったり、免疫力を高める効果のあるビタミンA、ホルモンバランスを整えてくれ、ニキビ、シミ、そばかすに効果があるといわれるビタミンE等が身体に吸収されやすい形で含まれており、良質なたんぱく質、カルシウム、コレステロール低下や脳の機能を活発にすると注目されているDHA、血管を丈夫にするといわれているEPAも含まれています。

 うなぎの蒲焼きにも、地域ごとに違いがあるのをご存知でしょうか。うなぎの蒲焼きは、しょうゆが関東でも作られるようになった頃から江戸で人気となったそうです。その頃はしょうゆの香ばしさを楽しむ、甘味の薄いものであったようです。その後、みりんなどを加えて若干甘めのタレが用いられていくようになりました。関東のうなぎの蒲焼きは、うなぎを背中から開いて串を打ち、さっと白焼きにしてから蒸して脂気を落とし、タレにドボンと漬けて焼くのが普通です。うなぎを串ごとタレに漬けるのでタレにはうなぎの旨味が混ざり、使い込んだタレのカメは店の宝にも。先の戦争では、タレを疎開させたり、店の台所の地中深く密閉して埋め、難を逃れたというエピソードが聞かれたほどです。今でも関東のタレはしょうゆとみりんが半々程度の辛口のものが主流です。対する関西風は、うなぎを腹で開いて焼き、そこにひしゃくでタレを何度もかけながら焼きます。そのためにタレは薄めでさらっとしており、みりん以外に砂糖、酒などを合わせ、関東に比べると甘口のタレです。焼きあがったうなぎを小さくきってご飯にまぶして食べるマムシと呼ばれる食べ方があります。 そして赤味噌などの独特の食味文化を持つ名古屋あたりのものは、濃口しょうゆに溜まりしょうゆをブレンドし、ザラメ、氷砂糖なども使って煮詰めて作り、色、味とも強くコクのある味に仕上げているのが多いようです。ちなみに、名古屋では大阪と同じように蒸さない焼き方を用います。

 最後に、買って帰ったうなぎの蒲焼きの、美味しい温め方をお教えしましょう。電子レンジの場合は酒を小さじ1/2ぐらい振りかけてから電子レンジにかけます。その時、決して加熱しすぎないようにしましょう。ゴムのようになってしまいます。こんがりと仕上げたい時には、テフロン加工のフライパンに皮目を下にして入れて、皮目がパリッとしたら裏返して身の方も焦がさないように温めます。ふんわり軟らかく仕上げたい時は、タレと日本酒少々を加えて蓋をして蒸し焼きにします。魚焼き網やオーブントースターの場合、アルミホイルの上にうなぎの蒲焼きを載せ、酒少々を振りかけて焦がさないように温めます。面倒でなければ添付のタレをハケやスプーンなどで塗るとより一層香ばしく仕上がります。  未だに謎の多いうなぎ、今夜は関東風、関西風、それとも名古屋風の蒲焼きにしますか?それとも、新しいレシピにチャレンジしてみますか?

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