コラム編集部のいちおし特集
寒い日は、北欧から料理を学びたい
vol.42
2014年11月28日
北欧といわれるのは、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーの三国。冬の寒さは日本の比ではなく、夜も長いので、そこに住む人々は、寒さ対策のための知恵を沢山持っています。生活スタイルもさることながら料理についても学ぶことがとても多いんですよ。
この冬は北欧の料理の知恵を取り入れて、あったかく過ごすのはいかがでしょう。
■北欧でライ麦パンがよく食べられる理由
北欧の国々の冬はとても寒いため、外食は控えめ。でも、その分週末には誰かの家に集まってパーティーでワイワイ盛り上がるのだそうです。私たちが“バイキング”と呼んでいる料理形態も実は北欧のもので、本当は“スモーガスボード”というのが正式名称。ホームパーティーが一般的な地域だからこそ、持ち寄った料理を好きに取って食べるというスタイルが生まれたのかもしれません。
ところで北欧でまずイメージされるのは、サーモン、にしん、じゃがいもなどの食材と、マリネ、燻製、塩漬けといった調理法です。厳寒の地だけに保存食のようなものが多くみられますね。また、長い冬を生き抜くためには脂肪を蓄え、エネルギーを確保することが必要。料理にも、生クリームやチーズなどの高カロリーのものが使われているのが目立ちます。
さらによく用いられるのがライ麦パン。北欧の朝食では、薄く切ったライ麦パンに、チーズ、サーモン、ハムなどを載せて食べることが多くあります。これは昔から、寒冷地ゆえに上質な小麦が育ちにくく、その代りをライ麦が担っていたから。ライ麦パンは、小麦のものよりグルテンが少ないので生地の伸びも悪く、目が詰まり、水分が抜けないのが特性ですが、その分ずっしりと重く、麦の濃厚な旨みがあって噛み応えもあり、腹持ちもいいのです。そんな理由もあって、昔から北欧ではライ麦パンがよく食べられていたんですね。
■北欧の人の知恵が詰まった家庭料理
今回の特集「寒い日は、北欧から料理を学びたい」では、4つのレシピを紹介しました。なぜか、北欧のメジャーな家庭料理には人の名前がついたものが目立つのが不思議ですよね。気になる由来や、それぞれのレシピについてご紹介します。
「ヤンソンさんの誘惑」で知られるヤンソンさんとは、19世紀にいたエリク・ヤンソンのことで、宗教家で菜食主義の人でした。そんなヤンソンさんがアンチョビ入りのこの料理の誘惑に負けてしまい、食べてしまったとのエピソードがあります。スウェーデン語では、ヤンソン・フレステルセというそうですが、訳すと、「ヤンソンさんが誘惑された」とか、「ヤンソンさんを誘惑した」になるらしく、以来ヤンソンさんの誘惑と呼ばれています。
もうひとつの名前がついた「空飛ぶヤコブさん」は、航空会社に勤めていたヤコブさんを指します。ヤコブさんは妻の外出中に子供に料理を作らなくてはならず、冷蔵庫などの残り物を次から次へと入れて作ったそうです。タイトルにシチューと記していますが、鍋で煮込むのではなく、オーブンで焼いている見た目はグラタンに似たもの。レシピには、ローストチキン、バナナ、ベーコン、ピーナッツ、生クリーム、チリソースとおよそ合いそうにないものが並んでいますが、作って食べるとそうでもなく、意外なマッチングに驚くはず。これをカレーのようにご飯にかけて食べるので想像がつきにくいかもしれませんが、一度だまされたつもりでチャレンジしてください。意外とクセになるかもしれませんよ。
さけでおなじみのノルウェーからは、「ノルウェー風サーモン」を紹介しています。この料理は、さけと相性のいいディルの葉とレモンを挟んで、サワークリームのソースをかけて焼いたもの。はちみつを入れる点が意外に映るかもしれませんが、これを用いることで全体の角が取れ、まろやかに仕上がるのです。サワークリームには、日本人があまり使いなれていないものですが、北欧では多用されています。このサワークリームとレモンの酸味がサーモンを爽やかな味にしてくれるはずです。
ミートボールの料理も少し普通のレシピとは違います。じゃがいものすりおろしを入れるのが北欧流。ホワイトソースを用いることが多いですが、このレシピは小麦粉をきつね色になるまで空炒りして作るブラウンソースがポイント。このブラウンソースについては家庭ごとに作り方があるようです。いつもの洋風ミートボールではなく、このソースをかけてマッシュポテトを添えると、フィンランド風に変わります。
最後にもうひとつ。サンタクロースの故郷ということで北欧のクリスマスに欠かせないのがミルク粥。12月23日にミルク粥を作り、翌日に屋根裏部屋や納屋に置くそうです。北欧ではミルク粥が妖精の好物と伝えられており、置いておけば、妖精がそれを食べるといわれています。もちろん、人が食べるためにもバターや砂糖、シナモンが入った甘いミルクのお粥は作られており、その中にアーモンド一粒を入れるのが決まりごと。それが当たった人は、次の年、幸せになるといわれているのだそうです。
まだ、あまりなじみのない北欧料理ですが、この冬は本格北欧レシピにチャレンジして、冬を生き抜く知恵を学んでみてはいかがでしょうか。