コラムひとつの食材アレンジ特集
牛肉
vol.51
2017年4月3日
牛肉は部位によって味や適した調理法が大きく異なります。スーパーなどでよく見るのは「ロース」「バラ」「ヒレ」「モモ」などがその名称。「ロース」にはリブロース(ロースの大部分を占める部位で、肉質がきめ細かい。適度に脂肪分が含まれているので、すき焼きやしゃぶしゃぶに適している)と、肩ロース(肩の部分にあるロース肉。適度な脂肪分ときめ細かい肉質だが、やや筋があるので薄切りにして調理する)があります。「バラ」はろっ骨についた肉のことです。濃厚な風味があるので、焼肉や煮込み料理に向いています。ちなみに、「カルビ」とは韓国語でバラ肉のことを指します。「ヒレ」は一頭の牛から約3%しかとれない貴重な部位。とても柔らかく肉質がきめ細かいので、火を通し過ぎないステーキなどで味わいます。「モモ」は、内モモと外モモに分かれており、脂肪分が少なく肉質はやや粗め。赤身部分が多いので、塊のまま調理するローストビーフなどに適しています。一言で牛肉と言っても、脂肪の入り方や肉質は部位によって様々です。これらを理解した上で、調理をしたいものです。
大阪・北新地で、肉で和食コースを表現したいという珍しい「肉割烹 山口」。そこの店主の山口弾さんに牛肉の美味しい焼き方などを教えてもらいました。「肉割烹 山口」は牛肉を始め、スッポンやイノシシが味わえるそうで、中でも天然の青首鴨はとても珍しく、これらをこだわりの野菜とともに和食で表現する人気店です。そんなこだわりの店を切り盛りする山口さんが話す牛肉の保存方法とは下記の如く。「肉割烹 山口」では、牛肉を専用シートでしっかり包み、0〜-1℃の低温で保管しているそうです。それを、注文がある度に切って調理をしているのです。山口さんは「今は低温で長期熟成した熟成肉も流行ですが、うちでは鮮度のよい肉を提供するようにしています。家庭でも牛肉を購入してきたら、なるべく早くに使った方がいいと思います」と話します。スーパーなどで販売されている牛肉は、店頭に並ぶまでに何日かかっているかなどを消費者が知ることはできません。それならば、購入した後はなるべく早く使って少しでも鮮度のいい状態で食べることがいいのではとのことでした。
さらに、今回は家庭でもステーキを美味しく焼く方法を教えてもらいました。まずは、牛肉を焼く前に室温に戻しておくことが大切だそうです。冷蔵庫から出してすぐの場合だと、牛肉の中までしっかり冷えているので、なかなか熱が伝わらず、生焼けになってしまいます。特に脂肪分の少ない赤身肉を焼く方が難しいそうで、「脂は赤身肉よりも温まりやすいので、火が入りやすいんです。赤身肉は火が入りにくいから、一層焼き方が難しいですね」。ステーキの焼き方は店それぞれで大きく異なるそうで、今回は山口さんが実際にしている赤身肉の焼き方を伝授してくれます。「昔は表面をしっかり焼いてから中をじっくり焼くという方法が主流だったのですが、今は低めの温度でじっくりと肉を焼き、先に肉の中心の温度を温めて熱を入れた状態にしてから、外側をカリッと強火で焼くという方法があります」とのこと。
近頃はヘルシー志向が高いこともあり、赤身肉が特に人気です。脂肪分が少ない赤身肉(ヒレやモモ肉など)は他の部位に比べると低カロリーなのは当然ですが、それ以外にも注目すべき栄養素が含まれています。
貧血予防に効果的な鉄分を含んでいるのがひとつの特徴。鉄分には体内で吸収されやすいヘム鉄と吸収されにくい非ヘム鉄があるのですが、牛肉にはヘム鉄が含まれています。体内への吸収率は非ヘム鉄を含むほうれん草の約10倍とされています。また、牛肉には食べた脂肪の燃焼を促進させるL-カルニチンが豊富に含まれています。
刺しの入り方や肉質の細かさなど、好みが大きく分かれる牛肉ですが、今回紹介するバラエティ豊かなレシピでお気に入りの味を見つけてみてはいかがでしょうか。