“家庭料理”に想うこと(斉藤美紀さん)コラム
vol.1
2007年8月15日
レシピの制作を手がけている斉藤美紀さんに、お話を聞きました。
私が料理に興味を持ったのは、母の作った料理と、父の作った料理で味の違うことを発見した時。この違いはまさに驚きで、私の原点になっているとも言えますね。
例えば小芋を煮たとすると、母は田舎の出身だったので、どちらかというと濃いめの味付けで、醤油の色の付いたものを作るのです。ところが父が作ると、京風薄味の、ほとんど色の付かない、まるで割烹で出てくるような小芋の煮物を作るのです。母は、毎日家族の健康を考え、日々の惣菜としての料理をしていますが、父は、どうせ食べるのなら美味しいものを食べてやろうと言う人なので、趣味の釣りや山登りを通じて、漁師さんや農家の方などから、魚のさばき方や美味しい料理法を色々と聞いてきたりします。また、食事に行った先で美味しいものを食べると、その作り方を聞いてきて家で試したりしていたりするんですよ。子どもの頃から両親がお互いに料理を作っていて、その味が違うのは普通だったので、私にとっての家庭の味は、決して母の味だけじゃないんです。つまり私の中には、お袋の味と親父の味が混在しているんですよ。
そこで「料理って作る人でこんなに違うものなんだ。じゃあ、きっと自分が作ると、また違ったものができるんだろうな」と、思いました。ただ、料理に接するって言っても中学、高校での調理実習で作ったりする程度。そんな私に転機が訪れたのは就職して食べ歩きをし出してから。その頃ちょうど創作和食が流行っていて、色んな新しいものを食べたりしているうちに、これはもうちょっとこうした方がとか、美味しいものは家で再現してみたりとかするようになったんです。そして、たまたま目にした冷凍食品のレシピコンクールに入選したことで、ちょっと真剣に勉強してみようかなと思うきっかけになりました。
今年は、色々と食を取り巻く問題が顕在化していますが、社会全体のモラルの低下が引き起こしていることが多いと思います。消費者は食品の表示を信じるしかないので、生産者がコストだけに目を向けず、プライドを持って作って欲しいですね。また消費者の方も、正しい味覚を持てるようにしていく必要があると思います。そのあたりもふまえて、これからは、シンプルな味付けだけで素材の美味しさを引き出せるようなレシピを作っていけたらな〜と思っています。