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知っているようで知らない、まぐろのあれこれ。コラム

vol.24

2011年12月16日

 まぐろは、スズキ目サバ科マグロ族マグロ属に属する魚で、かつお、さわら、さばなどは親戚に近い種類。それらの中でも特に大型の魚です。大きさは、30cmぐらいのものから3mのものまであり、大きいものから順に、クロマグロ、ミナミマグロ、メバチマグロ、キハダマグロ、ビンナガマグロの5種を店頭でよく見かけます。腹の部分が大きく、頭と尻尾に向かってすっと細くなった紡錘形で、海を高速で泳ぐのに適した形をしています。なぜまぐろは海を高速で泳がなくてはならないのでしょうか?それは、まぐろの呼吸が、口から取り入れた海水の中から酸素を取り入れているから。もし何らかの理由で喉がふさがったり、止まったりすると、新鮮な海水が入ってこなくなってたちまち死んでしまいます。しかも、エサとなる小魚やいかなどを求めて広い外洋を回遊するために、高速で移動する必要があるのです。まぐろは、通常で時速30〜60キロ、獲物を追いかけている時には120キロとも160キロともいわれます。もし海の中でそんなまぐろと船が衝突したら、ダメージはちょっとした交通事故なみになるでしょうね。

 そんなまぐろの習性を踏まえて、昔から色々な漁法が考え出されました。今一般的なのは、一本釣りと延縄漁(はえなわりょう)です。一本釣りは一匹ずつ釣竿で釣る方法で、ヘミングウェイの名作「老人と海」で老漁師が使っていた手法。但し、この漁法は、長い間まぐろと引っ張り合いを続けると、パニックを起こして体温が急上昇してしまい、身が煮えて茶色く変色してしまうのだそう。そのあたりの見極めが漁師の技量のようです。延縄漁は、10〜100Kmの長さの太い縄に、30〜50m間隔で、釣り針とエサをつけた少し細い縄をパン食い競争のように垂らし、引っ張りながらまぐろに食いつかせる漁法です。エサに食いついたまぐろは、3〜4時間ほど引っ張りまわされ、少し疲れた頃に引き揚げられて急所を一突き。そしてマイナス60℃の急速冷凍庫で瞬間冷凍されます。なので冷凍のまぐろはある意味、生のまぐろよりも新鮮ともいえます。

 いったいまぐろはいつの頃から日本人に食べられるようになったのでしょうか。実は縄文時代の貝塚から、骨が出土しているそうです。ところが万葉集に登場するまぐろは「シビ」を呼ばれて、その発音から「死日」を連想させる不吉な魚として忌み嫌われていました。その後、まぐろの不遇の時代は長く続き、冷蔵技術のない江戸時代も、特に美味しい魚ではないと評価されていました。江戸の末期から、江戸近海で大漁になり、その上、しょうゆ漬けにして保存して食べることができるようになりました。明治時代に入ると、氷保存輸送の技術も発達し、ようやくまぐろを刺身にして食べるようになりました。昭和に入って1960年代、食の洋風化が進んで脂の乗ったトロの美味しさが認められるようになったのです。そして1990年代に入るや、世界的な寿司ブームで、まぐろがネタとして引っ張りだこに。また、最近では、中国やロシアの富裕層が盛んに消費するようになり、乱獲が国際問題になってきています。
 
 一年中いつでもあるような気がするまぐろですが、果たして旬はあるのでしょうか?最高級とされるクロマグロは、季節によって回遊し早春〜夏には九州の油津、壱岐、和歌山の那智勝浦などで水揚げされます。そしてどんどん北上して行き、佐渡や青森の大間などでは夏〜冬に水揚げされるのです。ミナミマグロは南半球にだけ生息し、クロマグロの入荷が少ない夏場に、多く入荷されます。その他のまぐろは、生息域が違うこともあり、ほぼ通年で入荷しています。

 ところで、まぐろの名前の由来をご存知ですか?まぐろは目が大きく黒いことから「眼黒」が転じてそう呼ばれるようになったという説と、背中が黒く、泳いでいる時に水面が黒い小山のように見えることから「真黒」が転じたという二説があります。それぞれの種類の呼び名は、クロマグロはその名のごとく背中が黒いことから。幼魚はメジマグロやよこわと呼ばれます。ミナミマグロは南太平洋にのみ分布することから呼ばれ、インドマグロの別名もあります。メバチマグロは目玉が大きいことから。キハダマグロは体とヒレの色が黄色いことから呼ばれ、これが最も漁獲量が多いのです。その身は「ライトミート」と呼ばれてツナ缶などに利用されています。ビンナガマグロは、むなびれ(ビン)が背びれの後に達するほどにも長く、ビンチョウの別名もあります。まぐろの中でも身が特に白く、ホワイトミートとしてツナ缶の材料になります。少し前までカジキマグロとして店頭で並べられていたものは、マカジキやメカジキの切り身で、正式な呼び名ではないのです。これらのカジキはまぐろとは別の祖先を持つ主であるため、現在ではカジキマグロという呼び名は段々とすたれ、マカジキ、メカジキといった種の呼び方に変わりつつあります。

 最後に、冷凍のまぐろの柵の上手な解凍方法を伝授しましょう。冷凍のまぐろをパックから出したらさっと水洗いし、海水と同じ3%の塩水に5分ほど浸します。これで身が締まり、色も鮮やかになります。その後さっと水洗いしてキッチンペーパーで水分をよく拭き取り、バットに入れて冷蔵庫で5〜6時間かけてゆっくりと解凍しましょう。新鮮なものほど、解凍した後に死後硬直で身が縮むそうです。ちなみに、一度解凍したものを再冷凍するのは絶対に避けること。美味しさが全部流れ出てしまうからです。
 さあ、今日はイエローエプロンズのレシピを使って、美味しいまぐろをたっぷりと堪能してください。

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