古くから人々の食生活を支えていたのに、意外と分かってないその生態。コラム
vol.26
2012年4月18日
貝は、大きく分けると二つの貝殻が合わさった形の二枚貝と、ぐるりと巻いた形の巻貝に分けられます。貝は軟体動物の一種で、学術的には二枚貝は斧足類、巻貝は腹足類と呼びます。これら以外の軟体動物で殻を持つものにはヒザラガイ(多板類)や、貝殻を持たないものにはアメフラシやウミウシがいます。二枚貝の代表的なものがあさり、しじみ、はまぐりで、巻貝はさざえ、バイ貝などです。では、あわびは二枚貝でしょうか、巻貝でしょうか?あわびは二枚貝のように見えますが、実は巻貝の入り口が大きくなったもので、巻貝に分類されるのです。
全世界にいったい何種類の貝がいるのでしょうか。実は、何種類の貝がいるのかということは、はっきりとは分かっていません。10万種という説もありますし、それ以上という説もあります。そんな中で、食用にされている貝は案外多くありません。それというのも、肉や魚と違って、多くの個数の流通が必要なので、安定して沢山獲れなくてはダメ。また、貝毒といって、食中毒の危険性のある毒を含む貝もあるので、市場で流通しているのは、数十種類、常時あるのは十種類前後になるようです。
人類はいつごろから貝を食べていたのでしょうか。人類が貝を食べていた証拠となる貝塚は、日本各地で発見されています。中でも一番古いのが、千葉県の西之城貝塚と神奈川県の夏島貝塚で、紀元前7500年頃の縄文時代早期前半の土器がいっしょに出土しています。動物や魚と違って掘れば獲れる貝は、縄文人のお腹を長い間いっぱいにしてきたのでしょう。
ところで、貝はその貝殻をどうやって調達していると思いますか?砂浜にいっぱい落ちている貝殻から、適当な大きさのものを拾ってくっつけていると思う人もいるようですが、実は、貝類の貝殻はその体とともに成長していくのです。最初は小指の先よりも小さかったのが、貝の体の中でカルシウムの結晶を作って殻の内側から結晶をつけ、体とともに殻も大きくなって食べられるサイズにまで育ちます。その成長の後が貝殻に残る横縞です。また貝殻にはこれとは別に茶色い筋模様も入っていますが、これは遺伝的な要因が大きく、同じエリアの貝は似た殻の模様をしているといわれます。
今、市場に出回っている貝は、二枚貝だとあさり、しじみ、はまぐり、帆立、牡蠣、たいらぎ、アカガイ、カラスガイ、ヒオウギガイ、ムール貝、ミルガイなどがあり、巻貝だとサザエ、あわび、トコブシ、バイガイなどがあります。寿司ネタでよく見かける鳥貝は二枚貝で、体を丸めたようにして貝殻の中に入っています。
最後に、上手な砂抜きの方法を紹介しておきましょう。砂抜き済みとい書いてあるものでも、たまに砂が入っていることがあるので、この方法を知っておくと便利です。
まず水と塩、ザルとボウル、新聞紙を準備します。汽水域(海水と真水が混じったエリア)に棲むしじみは、真水で砂抜きするようにとも言いますが、真水で砂抜きすると浸透圧の関係で、せっかくの貝の旨みが薄まってしまいます。そこで海水よりやや薄いぐらいの1〜3%の塩水を用意します。あさりやはまぐりは海に棲んでいるので、それよりも濃く海水と同じくらいの3〜5%の塩水(水1リットルに塩大さじ3〜5杯)を準備します。舐めてみると、普段食べている吸い物や味噌汁の塩分濃度が0.8〜0.9%なので、ずいぶんしょっぱく感じられると思います。あさりやはまぐりを薄い塩水に漬けると、グッタリとして砂を吐かなくなるので、塩は分量通りきちんと入れましょう。
貝は、貝殻同士をこすり合わせて洗ってザルに上げます。ボウルに塩水を入れたら、ザルに入れた貝をボウルに浸します。この時、貝を直接ボウルに入れると、底になる貝は上の貝が吐き出した砂を吸い込むことになるので注意を。ザルで貝を浮かした状態にして、砂が下に落ちるようにしてやるのがいいのです。そしてそのまま2〜3時間から一晩、上に新聞紙をかけて静かな場所で砂を吐かせます。この時、夏でなければ冷蔵庫に入れる必要はありません。冷蔵庫に入れると寒いので貝が眠ってしまい、かえって砂を吐かなかったりするからです。
砂を吐かせた貝は、そっとザルごと引き上げ、水で洗ってからまたザルに戻し、上から濡らしたキッチンペーパーなどをかぶせて1〜3時間、室温か冷蔵庫で休ませます。こうすることで体内取り込んだ塩辛い水を吐き出し、また貝自身の旨みも増えます。使う直前にもう一度さっと洗って、料理に使いましょう。
潮干狩りに行ったり、お土産にもらったりして貝が沢山ある時は、砂抜きまでしてから冷凍用の厚手のビニール袋に入れて冷凍してください。大体2ヶ月ぐらいは持ちます。使うときはそのまま汁に入れたり、フライパンで炒めたりして調理します。
さあ、今日は美味しそうな貝を買って、砂抜きをしっかりしたら、明日はどのレシピに挑戦しようか、そんなことを思いながらイエローエプロンズのレシピをご覧ください。