古くから身近にあるのに意外と知らないお餅のことコラム
vol.34
2014年1月9日
日本の伝統食とも言える「餅」。日本ではいつ頃から食べられるようになったのでしょうか?最も古く餅のことを書いているのは、奈良時代に編纂された『豊後国風土記』(ぶんごのくにふどき・713年)という豊後の国の起こりを書いた本です。昔から、餅は白く、丸い、神聖なものとされ敬われていました。餅が丸いのは、一説には人の魂がこもる心臓を模したともされています。また、人と人のつながりが円満であることを表しているとも言われています。そこで長寿や円満の願いを祈願するために、正月に家にやって来る年神様に福と得を重ねがさねよろしくお願いしますということで、二段重ねにした鏡餅を床の間に供えるそうです。満月のことを望月(もちづき)と呼ぶことから、餅をおがむと望みがかなえられると信じられてきました。満月のように丸い餅は、三種の神器の一つの銅鏡に似ていることから、鏡形の餅、鏡餅と呼ばれるようになりました。つまり鏡餅は、餅の中でも一番神聖なものとされているのです。
さて、餅は日本だけのものと思いがちですが、実はラオス、ベトナム北部、タイ東北部、中国の雲南省の少数民族なども、お祝いの時に餅をついて食べたりしています。また、彼らは普段の主食も、もち米を蒸した強米(こわいい)を食べています。日本でも祭礼などの際に強米を食べることがあるので、似た食習慣と言えます。
ところで、皆さんが食べるのはどんな餅ですか。スーパーなどで売られている袋入りの市販品や、餅屋さん・和菓子屋さんの店頭で買うもの、時には通販での取り寄せるというのもあります。年末なら自宅で餅つきをする人もいるかもしれませんね。それぞれのお餅に違いはあるのでしょうか?大阪にある「餅匠しづく」の店主・石田嘉宏さんによると「杵つきと表示されている市販の餅は、工場で機械がついています。街中の餅屋さんや和菓子屋だと、臼と杵でついているところもありますが、昨今はやはり機械が多いでしょう。一般の人は、そういった機械でついたものより自分たちが臼と杵でついた方が美味しいと考えますが、たまに餅つきをするぐらいでは、最初から最後まで同じ強い力で、しかも短時間で餅をつき上げるのは難しいんですよ。それに途中でもちをひっくり返す“かいどり”の作業中に餅がくっつくのを防ぐのに、ついつい水を多く使ってしまいがちに。なのでどうしても水っぽい柔らかな餅になってしまうんですよ。水気の多い餅はどうしてもコシがなく、特に、茹でたり煮たりした時にとても溶けやすくなってしまいます。」と、餅の性質を教えてくれました。「その点、工場生産の場合は、新しい機械で杵を振り下ろすので一定の力で早くつけます。それでも、うちで今使っている昔ながらの機械に比べると力が弱いので、つき上がりのコシは少し弱くなりますが…。餅は煮るとその違いがはっきりと出ますが、焼いた場合は差が出にくいので、食べ方で餅を使い分けるといいですね」とアドバイスしてくれましたよ。
また、餅は腹持ちがいいと言われますが、それは、餅の消化が緩やかで、ゆっくりとエネルギーに変わるからです。同じ200キロカロリーなら、餅の方が米よりも少量で済むこともあり、マラソンやサッカーなどのスポーツ選手で試合前には必ず餅を食べるという人もいるそうです。
最後に、餅の保管などについて。皆さんは餅の袋の裏を見たことがあるでしょうか。全国餅工業協同組合によると、「市販の餅には、糯米(もちごめ)だけで作られたものと、もちとうもろこし澱粉や、外国産餅粉などの粉を使ったものがあるんです」とのこと。それぞれに味や価格に違いがあるので、必要に応じて選びたいですね。袋の裏には消費期限なども書かれていますが、「期限内であれば、安心して食べることができるのですが、袋に穴などが開いていると、カビや虫が発生することがあります。保管する時には、袋に穴が開いていないか確認してください」と話しています。家で保管中にうっかり上から物を落として穴を開けたりしないように注意してくださいね。