“トマトのできるところは医者いらず”のことわざも…コラム
vol.39
2014年9月1日
スーパーに行けばいつでも野菜のコーナーに並んでいるトマトですが、よく見れば最近はその種類も豊富。昔ながらのゴロンと大きなものや、お弁当の彩りに使うプチトマトだけではなく、ミディトマトや塩トマト、高リコピントマトなど売り場でどれを買おうか目移りしてしまうほどです。そして実際に手に取る時には、どんなものを買えばいいの?と意外と基本的なところで考えてしまう経験もあるのではないでしょうか。スーパーに売られているトマトには大きく分けて、ピンク系と赤系の二つがあります。ピンク系といわれるのは、昔ながらの大きいトマトで、桃太郎などが有名な品種です。このタイプは熟すと柔らかくなるので、やや青いうちに収穫して、流通している最中に追熟させます。もしスーパーで買った大きなトマトの一部が青いようなら、風通しのいい部屋に置いておけば自然と追熟し、赤くなって甘みも乗ってきます。赤系と呼ばれるのは、ミニトマトやミディトマト、高リコピントマトなどで、赤くなっても果肉がある程度しっかりとしているので、完熟させてから収穫しますから、室温に置いておくとどんどん柔らかくなってしまいます。この場合は買ったら冷蔵庫で保管しましょう。
このようにありふれているトマトですが、世界で一年間に一体どれくらい食べられているかというと、約1億2600万t。玉ねぎの消費量が6400万tですから、倍ほど消費されているわけです。そして主な消費地は地中海沿岸の諸国、中米、南米なのだとか。ではいったい彼らはどんな風にしてそんなに沢山消費しているのでしょうか。それを知るには、まずトマトの成分を見てみましょう。
トマトにはビタミンB群、C、E、K、カリウム、水溶性植物繊維のペクチン、クエン酸、リンゴ酸などがバランスよく含まれています。そして特筆するべきは、グルタミン酸の含有量が野菜の中でもずば抜けて多いこと。トマト専門の調味料製造会社に勤務していた経験があるというフードコーディネーターの有田理子さんによると、「グルタミン酸は昆布に多く含まれている旨み成分です。日本のようにだしを使う文化のない西洋では、グルタミン酸を豊富に含むトマトをだし代わりに使うのです。そして丁度日本でしょうゆや味噌を使うようにトマトを使います」との話でした。旨み成分というのは違う種類の旨み成分と合わせることで相乗効果をもたらし、美味しさを1+1=2ではなく、3にも4にもしてくれます。「グルタミン酸以外のイノシン酸を含む肉や魚、グアニル酸を含むきのこなどと組み合わせた料理にすることで、グッと強い旨みを生み出すようになるのです」と有田さんは言います。「トマトに含まれるクエン酸やリンゴ酸は、肉や魚の匂いを消してくれ、トマトを使うことで旨みが強く感じられ、塩を控えめに作っても美味しく食べられる」と、まさにトマトが万能調味料として活用されていることを示しています。日本ではだしを引きますが、海外ではトマトを組み合わせて旨みを得ていたようです。
そんなトマトの新しい活用術は?と有田さんに聞くと、「グルタミン酸を利用して、市販のトマトソースに市販の麺つゆを1:1〜3の割合で加えて、それでそうめんや細うどんを食べてみてください。かすかな酸味と旨みが加わってぐっとコクが出て、今までにない味わいを楽しめますよ」。さらにいつものカレーにザク切りのトマトを加えると、カレーがまろやかになり、味に深みが増すそうです。トマトには抗酸化作用やの強いリコピンも含まれ、その赤い色が食欲を増進させてくれます。上手に使って、沢山食して、暑い季節を乗り切るにはピッタリな食材かもしれません。