春雨ってヘルシーなだけではありませんコラム
vol.52
2017年4月28日
毎日が慌ただしく過ぎていく中でも、朝・昼・晩の食事の用意は欠かせません。そんな忙しい現代人を助けてくれるもののひとつが保存食です。塩漬け、砂糖漬け、乾燥させたもの、缶詰など保存食と一言でいっても色んな形態のものがあります。今回は、その中でも乾物の春雨についてスポットを当てます。どこの家庭でもそうかもしれませんが、乾物や缶詰をストックしている中に春雨の袋が眠っていることってよくあります。
そもそも、春雨は中国で造られた食品で、鎌倉時代には日本に伝わり、精進料理などに使われたのが初めとされています。春雨の原料は大きく分けて二種類あります。中国料理でよく使われる春雨は、コシがあって細めのもので原料は緑豆です。緑豆といってもあまりピンとこないかもしれませんが、実はよく目にしている食材でもあります。緑豆はもやしの原料として中国から輸入されているものなのです。もやしといえば、安価な割に栄養価が高い食材として知られています。緑豆春雨も同様に栄養価が高いものだと、栄養士の田中茜さんが教えてくれました。「春雨といえば低カロリーで、ダイエットに向いている食材というイメージがあると思いますが、それだけではありません。特に緑豆春雨の場合は、緑豆に含まれる豊富なミネラルが摂取できるんです。他にも、緑豆には利尿作用があるのでむくみ防止にも役立つとされています。でも、成分のほとんどは炭水化物なので食べ過ぎはよくないでしょう」とのことでした。
国産春雨の主原料となるのはじゃがいもやさつまいものデンプンです。なぜ、国産の春雨はこれらのデンプンを利用するかというと、緑豆が手に入らないから。前述しましたが、緑豆はほぼ中国からの輸入に頼っているのが現状なので、国産の春雨を作る場合は国内で手に入るじゃがいもやさつまいものデンプンを使うことが主流になりました。コシがある緑豆春雨とは違い、国産春雨はやや柔らかいのが特徴です。長時間煮込むと煮崩れをすることがありますが、そこは好みの問題なので、料理によって使い分けたりするのもいいかもしれません。
緑豆春雨と国産春雨が春雨の主流ですが、最近スーパーで見かけることが多くなったものがあります。それは、韓国春雨。白っぽい色をした緑豆春雨や国産春雨とは見た目が全く異なり、やや灰色がかっています。これはさつまいもが主原料の春雨で、代表的な韓国料理の「チャプチェ」などに使われます。ツルツルとした食感は他の春雨と同様ですが、太めなのでしっかりとした歯応えが魅力です。
どうしても、春雨といえば中国料理をイメージしてしまいがちですが、国内にも春雨をメインとした麺料理があります。それは熊本のご当地料理の「太平燕(タイピーエン)」。これは華僑が日本に伝えたものだそうで、本場・中国の「太平燕」を日本風にアレンジしたもの。中国のそれは独特な原料で作ったワンタンの皮が入ったスープ料理の一種ですが、それが日本では入手できないために、春雨を使ってアレンジを加え、いつの間にかスープ料理から麺料理へと変化していきました。現在、熊本で食べられる「太平燕」は、塩味、しょうゆ味などがベースのスープに、春雨とたっぷりの野菜と卵が入ったものです。ツルッとした喉越しの春雨とシャキシャキとした野菜の食感のバランスがよく、ここでしか味わえない味だと、名物料理にまでなっています。
春雨を家庭で使う場合、サラダやスープ、煮込み料理など一辺倒になりがちですが、意外にも栄養がある春雨をこの機会に一度見直し、今回紹介する様々なアレンジレシピを参考に毎日の食卓に取り入れてみてはいかがでしょうか。