昔からよく食べられる里芋の魅力とは…コラム
vol.54
2017年9月29日
加熱するとホクホクした食感が魅力的な里芋は、昔から日本人の食卓には欠かせない存在です。大きく美しい満月を愛でる十五夜は「芋名月」とも呼ばれ、里芋の収穫を祝って、里芋を蒸した「きぬかつぎ」を供えすることからこう呼ばれるようになりました。きぬかつぎとは、皮つきの里芋を蒸した(またはゆでた)もので、皮をむくと白い里芋が現れることから、高貴な家の女性が頭に被る布、衣被(きぬかつぎ)に似ていることから名付けられています。里芋はめでたい食材としても知られており、お節料理にも欠かせません。三の重に入れる煮しめにすることが多い里芋は、親芋が小芋を沢山作る様から子宝を象徴する食材として親しまれているのです。
日本人と里芋の関りは古く、中国から渡って来たのは縄文時代が最初ではと目されているくらいです。里芋は芋類の中でもカロリーが低く、高血圧予防に効果的なカリウムを多く含みます。たんぱく質やビタミン類を多く含み、食物繊維も豊富なので、特にカロリーを気にする人やダイエット中の人にはオススメの食材です。旬は秋から冬にかけて。その季節になると、東北地方を中心に「芋煮会」が開かれるのもひとつの風物詩になっています。これは大きな鍋で里芋や牛肉、ねぎなどを煮て、しょうゆ味やみそ味にして大勢で食べるもの。その歴史は古く、江戸時代に米の不作に供えて里芋を栽培していた農民がその収穫を祝って始めたものと伝えられています。東北地方では今でも「芋煮会」が各地で開かれ、町おこしイベントとして行われることも多いようです。
里芋の特徴のひとつであるぬめりにはガラクタンという成分が含まれています。これは脳細胞を活性化させたり、免疫力を高める効果があるので積極的に摂りたい成分のひとつです。大阪市内で料理教室「Re:KICHIN」を主宰する料理研究家の森田さやさんによると、「里芋はそれ自体の美味しさも勿論ですが、肉系やいか、たこなどの魚介系とも相性がいいので使いやすい点が魅力です。乳製品との相性もいいので、チーズと組み合わせることもできるので、幅広い料理に使うことができます」とのこと。森田さんが主宰する料理教室は、若い女性やOLさんなどを中心に人気を集めており、料理教室でも里芋を取り入れた料理が好評なのだそうです。「定番の里芋といかの煮物やお節料理に入れる煮しめなどを教室では紹介しました。8月頃になると新芋が出回る季節なので、その頃には里芋ご飯を作ってみようと思っています」。
前述したように、里芋のぬめりは栄養価が高いですが、調理する際にはそのぬめりで皮がうまくむけず、下処理が面倒に感じてしまうこともあるかもしれません。森田さんは、「里芋は水に触れるとぬめりが出るので皮がむきにくくなりますが、里芋を洗ってからしっかりと乾かして皮をむくとむきやすくなります。里芋を煮物などにする場合は、塩もみやゆでこぼしといった下処理をすると中まで味が染み込みやすくなりますが、煮物にしない場合は、皮ごと電子レンジで加熱すると簡単に皮をむくことができますので、それをコロッケやグラタンなどに使うといいでしょう」と話してくれました。下処理がやや面倒なので、冷凍里芋を使う場合もありますが、やはり生の里芋の風味は格別。「料理によっては下処理が省けるものもあるので、生の里芋の美味しさを味わって欲しいです」と話します。今回、紹介する里芋のレシピは、簡単な下処理で作ることができるものから、本格的な煮物のレシピまであります。里芋の魅力を再発見するべく、気になるレシピが見つかればぜひ作ってみてください。