お国柄に見る点心事情コラム
vol.57
2016年12月16日
■飲茶はお茶がなければ成立しない
中国料理に飲茶や点心といったジャンルがあります。食生活や食文化が異なる日本では、その定義が曖昧で、よく混同されて使われがちです。本来、点心は主菜とスープ以外の料理を指し、麺や粥までもそれに含みます。加えてお菓子や軽食類もそれにあたるので餅や饅頭も点心の一部です。中国では食事代わりの簡単なものを点心といい、間食するものや少量の料理も点心となります。なので主食・副食・点心と分けたり、朝食は点心で済ませる場合も多いそうです。
一方、飲茶は読んで字の通り。まさにお茶を飲みながら点心を食べることをいうのです。その際の点心には、甘くないものと甘いものがあり、前者は餃子、焼売、春巻、ちまき、小籠包、焼飯、粥、麺類など。後者についてはごま団子やあんまん、杏仁豆腐、月餅、それにエッグタルトもあるそうです。
点心は、日本だとどうしても蒸籠(せいろう)の印象が強くなります。蒸籠は釜の上に載せて底からの蒸気を通して食器を蒸す容器。何段にも重ねて蒸せるので便利で、蒸し野菜や焼売、ちまきなどが同時にできます。そのまま食卓へ出せたりするのでオシャレで使い勝手がいいのです。市販のあんまんを買ってきて電子レンジで温めると、皮がパサパサになりがちですが、蒸籠で蒸すと、ふっくらと出来たてのように仕上がります。この点から考えても温め直しには最適。冷やごはんや冷凍ごはんも蒸籠を用いると美味しくできます。
飲茶もそうですが、日本でポピュラーになったために日本風にアレンジされたりしている中華料理がいくつかあります。天津飯や冷やし中華、エビチリ、エビマヨ、中華丼は、実は日本オリジナルなのです。日本のオリジナルではないにせよ、焼き餃子も同じような類い。餃子といえば中国では水餃子が主流ですよね。
■家庭でも点心を楽しみたい
今回は大根餅に、中華風ちまき、焼売、マンゴープリンと、スタンダードな点心をラインナップしてみました。大根餅は定番なのになぜか一般的な中華料理店には少なく、ある程度グレードのある店でしか見かけないことが多々あります(個人的主観かもしれませんが・・・)。大根餅のポイントは、いかに大根らしさを醸し出すかで、今回はその食感をいかそうと半分はすりおろし、半分は千切りにして使いました。大根の水分だけで作っているので味がぼやけず、口内で本来(大根)の風味が広がるようにしています。手間のかかる蒸す作業を省いているので、家庭でも簡単に作れると思います。
中華風ちまきに入れる具材は、別段決まっているわけではありませんが、今回使用した干しえび、干ししいたけ、焼豚、たけのこの他に鶏肉やうずら卵、銀杏、栗などを入れても美味しいでしょう。但し、干しえびと干ししいたけは必。この二つは旨みがよく出るので具材として欠かせません。この手の味付けごはんは、炊飯器なら一気に全材料を入れてスイッチを押すだけでいいのですが、ちまきはごま油で餅米と具材、調味液をフライパンで炒め煮にするのがポイント。こうすることで米に色んなものの味を含ませていきます。
デザートの一つとして紹介した「大人のマンゴープリン」は、一般的なマンゴープリンよりお酒が入っている分、大人のイメージに仕上がっています。ここで用いた「マンゴヤン」は、乳製品との相性もいいのでマンゴープリンを作るのにぴったりなリキュール。初めに使用し、さらにトッピング用で加えているのは、火にかけることで芳醇な香りやアルコールが飛ぶことを考慮した上での作業。トッピング用として再度用いることでその特徴をうまく残しています。今回は「マンゴヤン」を多めに使いました。こうすることでマンゴーの味をよりはっきりとさせたかったのですが、アルコール分も多くなっているのも事実。その分、あえて“大人の”とネーミングしています。できれば大人の方のデザートとして供してください。