同じ水煮たけのこでも、今だけの味があるコラム
vol.9
2009年4月2日
立春を過ぎると、スーパーの店頭に顔を出し始めるたけのこ。この時期の竹の若い芽がまだ地中にあるときに掘り出したものです。たけのこ「筍」は、竹かんむりに旬と書くように、旬(約10日)の間に竹に成長してしまうことからあてられた漢字です。「古事記」にも書かれているほど古くから食べられていたのですが、私たちが今食べられているたけのこのほとんどは、その昔、中国から伝わってきたものです。…ということは古事記の頃に食べていたのは、いまのそれではなく日本に自生していた真竹(まだけ)のたけのこだったのではといわれています。
現在、日本では約70種類のたけのこが食用にされていますが、一般的に出回っているのは孟宗竹(もうそう ちく)のたけのこです。この種は、3月〜5月頃まで目にすることができ、たけのこの代表格となっています。孟宗竹の名前は、中国の二十四孝の一人である孟宗が、病気の母が真冬にたけのこを食べたがり、雪の中をさまよって掘り当て、食べさせたところ元気を取り戻したという故事から来ています。
この話から分かるとおり、原産は中国で1300年ごろに曹洞宗の開祖・道元禅師が宋から持ち帰り京都に植えたのが日本での起源。1736年に薩摩藩主・島津吉貴によって琉球経由で日本に輸入されたなど諸説ありますが、普及という点では、薩摩藩の輸入以降、各地に広まったようです。他には淡白な味わいの淡竹(はちく)、関西に多い真竹、千島笹などの名を持つ笹の一種の根曲がり竹などがあります。
生のたけのこは、茶色い細かなケバのついた皮に包まれており、独特のエグミやアクがあるので下ゆでを必要とします。そんな手間を省いてくれるのが水煮たけのこ。真空パックにされたものが一年中店頭に並んでいます。使い切れなかった水煮たけのこは水とともに密閉容器に入れて冷蔵庫で保管し、毎日水を替えると10日ほどは保存ができますが、できるだけ早く使いきる方がいいでしょう。また、この季節だけ、スーパーが独自にあく抜きした水煮たけのこを、ビニール袋などに水とともに詰めて売っていることがあります。もし見かけたらぜひ買って試してみてください。新しいたけのこには、この季節にしか感じられないほのかな香りと味、食感があり、真空パックのものとは一味もふた味も違うのが実感できます。素材そのものを使うのがいいのでしょうが、手間を考えるなら半調理品を利用して、上手に季節を食卓に取り込んでみてはいかがでしょうか。