江戸時代「豆腐百珍」の昔から、七変化の食材だったコラム
vol.41
2015年1月13日
豆腐というと、和食の影の立役者、暑い季節なら冷奴、寒い季節なら湯豆腐に鍋物。主役になることは少ないけれども欠かすことのできない食材です。勿論、和食だけでなく、発祥の地・中国では麻婆豆腐を筆頭に、海老と煮たり、みそ味で煮たりと、こちらも様々な料理法があるんですよ。
■“豆腐”名前の由来とは?
ところで、豆腐の漢字を妙に思ったことがある人はいませんか?豆が腐ってる?どっちかというと腐っているのは納豆じゃないか?と。豆腐と納豆の語源については、中国から日本に伝わった時に名札が入れ違ったとの説がまことしやかに囁かれたことがありました。ですが、中国でも豆腐は豆腐です。実際はどうなのでしょう。
豆腐も納豆も発祥の地は中国。豆腐は漢の時代にできたといわれていますが、書物に登場するのはずっと後の宋の時代(960年〜)です。奈良時代には日本に伝わったとされていますが、これとて平安末期、奈良の春日大社の神主の日記に「唐符」として初めて登場するのです。「豆腐」の文字が使われた一番古い例は、鎌倉時代の日蓮上人の手紙の中だそうです。「腐」という字は、中国では蔵(府)に肉を柔らかくするために保存している状態の意味だったとか。そこから転じて柔らかいものを指す意味になったようです。なので豆乳が固まった柔かいものを豆の腐ということで、豆腐になったらしいのです。ちなみに、納豆は寺の台所・納所(なっしょ)で作られた豆だから納(所)豆なんだとか。
■おいしい豆腐の食べ方とは?
調べると、意外に名前の奥が深い豆腐ですが、有馬温泉の老舗旅館「陶泉御所坊」の総料理長・河上和成さんによると「本当に美味しい豆腐は、何もつけずに食べても美味しいんですよ」とのこと。河上さんは京都で働いていた時には、様々な調理法を試したそうです。「江戸時代に豆腐百珍という料理本があり、それに載っているように、潰したり、蒸したり、重石をしたりと、ありとあらゆる料理を作りました。豆腐はどのような料理にもなり、使い勝手のいい食材ですしね」と河上さん。ところが「御所坊」では現在はあまりいじった豆腐料理は出していないとのこと。河上さんは、「本当に厳選した丹波の黒豆を使って造った豆腐を食べてみたら、黒豆が持つコク、甘みなどが濃く、潰したり、水を抜いたりといった小技は必要がないとわかったんです。その代わりに、併せる薬味にはそれ自体が主役になり得るような醤油や本枯節の鰹節などを吟味しました。そうしないと黒豆の良さを生かせず、引き立て合わないんですね」と話します。やはり素材自身に力があると、シンプルに食すことで旨さが際立つようです。それでも河上さんは、たまにちょっと変わったものとして、クセのないクリームチーズを載せて醤油とオリーブオイルを添えて提供することもあるのだとか。このように豆腐は、そういった変化球もあっさりと受け止めてくれる懐の広さを持っているようです。
買いなれた豆腐もいいですが、たまには高級な豆腐を買って、選りすぐった塩や、醤油でシンプルに食すのもいいのでないでしょうか。そして舌をリセットしたら、レシピッタの新しい豆腐レシピも試してみてくださいね!