実はお酒は飲むだけではなく、調味料にも!?コラム
vol.44
2015年11月30日
■人はいつからお酒を飲んでいた?
古くは紀元前4000年頃のメソポタミアの遺跡からワインを造っていた臼が発掘されていますし、紀元前3000年には同じくメソポタミアでビールも造られていたそうです。また、近年の考古学の分析では、紀元前7000年の中国の遺跡から、ぶどうや米、さんざし、糖蜜などで造られたお酒の成分が発見されました。今のところ、これが一番古いお酒の醸造の証拠となっているようです。紀元前7000年といえば今から9000年ぐらい前の新石器時代です。そんなに昔から人類はアルコール飲料を作って飲んでいたんですね。
ただ昔のお酒は、日常の飲物というより、むしろ神事に近い性質を持っていたという研究もあります。そんなお酒も、ピラミッドの建設の際には労働者にビールが振る舞われたり、中世の錬金術師によって蒸溜法が発明されて蒸溜酒が造られるようになったりと、人々の生活とともに変化していきました。
日本では、弥生時代に米と麹を使ったお酒が造られていたようですが、それ以前にも口噛みの酒が神様に捧げるものとして用いられていたという記述もあります。
そして時代はずっと近くなり、江戸時代。その頃庶民が清酒を愉しめるようになりました。明治期にはワイン、ウイスキー、ビールといった西洋のお酒も加わり、酒文化は一気に花開いていきました。
■お酒を料理につかうコツ
今日、流通の発達で世界中のお酒を楽しめるようになりましたが、基本は飲むもの。それだけではないお酒を紹介しようと、先日、かつて辻学園TEC日調西洋料理教授を務めた藤本喜寛さん(Fujimotoキッチンスタジオ主宰)がウイスキーを使った料理を考案し、それを有馬温泉の洋食屋「有馬食堂」でもメニュー化しました。そんな藤本先生にウイスキーを調味料の一つとして使うきっかけを尋ねると、「日本では、ワインやブランデーを使うことはよく知られているんですが、それ以外はあまり知られていないようですね。例えば、フランスではカシスやフランボワーズといった果実酒をソースの仕上げに、お菓子にカルヴァドスやグランマルニエなどもよく使います。今話題のウイスキーを、料理での活用も知ってもらえたらと思いました。提供しているのは、ムール貝をウイスキーで蒸した料理や、マヨネーズベースのドレッシングとウイスキーを合わせ、えび、りんご、セロリを和えたワイルドサラダなど。マヨネーズとケチャップを合わせた甘口のドレッシングには、辛口のウイスキーがよく合います。また、ウイスキー蒸しのムール貝は白ワイン蒸しとは全く違う香りと味わいになっています」と、思わずよだれが出そうなメニューを教えてくれました。
藤本先生によれば、マヨネーズとケチャップのドレッシングは、ジン、ウオッカ、テキーラなどの甘みのない辛口の蒸留酒をほんの少し入れるだけで劇的に変わるとのこと。他には、ブランデーはえび、かに、ステーキと相性もよく、ハンバーグの生地に練り込むと、味に奥行きと深みが出るそうです。「基本はね、甘いものには辛口のお酒。強い個性を持つ牛肉やフォアグラなどの素材には強い香りを持ったお酒を合わせるのがいいのです。その時にどんなお酒を選ぶかは、その料理人の主義主張ですね」とポイントをまとめてくれました。
さて、今夜の食材にはどんなお酒が合うでしょうか。レシピッタを参考に腕を振るってくださいね。