あさりやはまぐりは調理前に必ず砂抜きをコラム
vol.50
2016年12月27日
食用の貝は日本だけでも30種類以上あるといわれており、季節や地域によって様々な貝が食べられています。代表的なのがあさりやはまぐり、しじみなど。近頃は輸入ものも多く出回っているので、特に季節を感じない食材になってしまいましたが、本来は身がふっくらとして旨みが増す旬がそれぞれの貝にはあります。今回の「ひとつの食材アレンジ特集」では、貝の中でもよく食卓に登場するあさりとはまぐりを取り挙げました。あさりの旬は潮干狩りシーズンと重なる春と、産卵期を迎える秋頃です。あさりは日本各地に分布しているのですが、年々漁獲量が減り、現在はほとんどが輸入に頼っている状態です。一方、ひな祭りシーズンにはおなじみのはまぐりの旬は春先。なぜひな祭りにはまぐりが食べられるようになったのかといえば、どうやら旬とは無関係な理由のようです。はまぐりの貝殻が対になったものでなければピタリと合わないということから、仲のいい夫婦を表すものとなり、娘の将来を思う親心からひな祭りには欠かせない縁起物となったわけです。そんなはまぐりもあさり同様、現在はほとんどが中国などからの輸入に頼っており、日本国内では、茨城県の鹿島灘や三重県の伊勢湾など一部の地域でしか獲れないようです。
貝類は調理する前に必ずといっていいほど砂抜きをしなければなりません。近頃、スーパーで売られているあさりなどは“砂抜き済み”の表示をされているものもよく見かけますが、念のために調理する前にもう一度砂抜きをすることをオススメします。砂抜きの正しい方法について管理栄養士で料理研究家の杉山文先生は、「まずは海水と同じ塩分濃度(約3%)の塩水を用意します。ボウルにあさりなどの貝を入れ、そこへひたひたになるくらいの塩水を入れます。その上に新聞紙などで蓋をして冷蔵庫でしばらく置いておきましょう」と話しています。杉山先生によると、あさりやはまぐりなどは海の深い所に生息するものではないので、貝にかぶるくらいのひたひたの塩水を入れて生息環境の再現をすることで、貝が砂を出す環境になるのだそうです。また、貝を入れたボウルに新聞紙をかぶせるのは、ラップなどで密閉すると貝が酸欠状態になるので、ある程度空気を入れるためと、光を通さない新聞紙を使って暗くすることで、砂の中にいるような状態を再現するためだそうです。貝を食べた時にジャリッと砂を噛むことほど不快なことはありません。それを防ぐためには砂抜きをしっかりとしなければならないので、貝を買ってきたらぜひ砂抜きをしたいものです。砂抜きをした貝をすぐに食べない時には冷凍保存がオススメです。砂抜きした貝をジッパー付きの保存袋などに入れて冷凍し、調理する時には凍ったまま使用するといいでしょう。
貝の美味しさの秘密は特有の旨みにあるのではないでしょうか。前出の杉山先生は「貝にはコハク酸という旨み成分が豊富に含まれています」と言います。貝類はそれぞれの種類によっても異なりますが、旨み成分のコハク酸やグルタミン酸などがバランスよく含まれているために、特有の旨みがあると考えられています。杉山先生によると「貝はタウリンという良質なたんぱく質を多く含んでる」とのこと。これは悪玉コレステロールの低下や疲労回復に役立つなど生活習慣病予防に欠かせない栄養成分のひとつです。肝臓にたまった脂肪を排出する作用があるので、脂肪肝予防のためにもタウリンを適量摂取することは大切なことだそうです。
健康な身体を維持するのにも欠かせない貝類は旨みもたっぷり。その旨みを十分に引き出した調理法で美味しく食べたいものです。